【空がきれい】

 

 

――――あふれ出すその笑顔が 僕の事惑わせる
目を閉じてゆっくり開ける 今 空がきれいです

 

 

「…」

 

ある麗らかな日差しの春の午後。

こんな天気のいい日に教室でくだらない授業を受けるのも勿体無いと、

学校の屋上の陽だまりの中で犬飼は目を閉じていた。

 

瞼を閉じると浮かんでくるのは彼の姿。

 

口うるさくて

でも真っ直ぐで

そして何よりも自分のことを考えていてくれる

 

この空のような…彼。

 

「犬飼君、コラ、サボリは関心しませんよ」

「…!」

 

そっと目を開けた次の瞬間に飛び込んできたものに驚き

犬飼はがばっと起き上がった。

 

その瞬間、ぶつかる頭の頭。

 

「いった…な、何なさるんですか!」

「わ、わりぃ…な、なんでここにいるんだ?」

 

犬飼は頭を押さえながら目の前に居る人物に目を向けた。

 

辰羅川信二…。

 

まさに先ほど犬飼が瞼の裏に思い描いていた人物だった。

 

「貴方が屋上に行くのが見えたのであとを付けてきたんですよ。まったく…サボリはいけませんよ?ほら、帰りましょう」

 

片手で頭をさすりながらも、もう片手で犬飼に差し出す辰羅川を見て

犬飼は一瞬躊躇したが、そっと差し出された手をとった。

 

そんな犬飼に満足したのか、

辰羅川はにっこりと微笑み犬飼の頭をなでた。

 

「今日は素直でよろしいですよ。まったく、いつもこうなら私も怒らないのに」

「…」

 

なでられた頭に触れ、犬飼は頬を染めて俯いた。

 

 

――――ナチュラルなその素顔が 僕の事誘わせる
同じ時間の中で幾つものかたちを追っていた
君は感じるまま素直に自然に ただそのままで歩いている

 

「ほら、置いていきますよ?犬飼君?」

「…待てよ」

 

歩き出した辰羅川に気付き、犬飼は頬の熱を冷まそうと頭を振り

そして立ち上がって後に次いだ。

 

この感情がなんであるかは犬飼も気付いていた。

だけどあまりに自然体な彼に思いを告げることはできなかった。

この関係が壊れるのが怖くて…

 

 

「犬飼君、ほら、授業が終わってしまうじゃないですか」

 

少し遅れてついてくる犬飼に痺れをきらし、

辰羅川はその手をとって早足で歩き始めた。

 

繋いだ手のひらから辰羅川の熱が伝わってくる。

自分より一回りも小さいその手のぬくもりを感じ、

先ほど無理に覚ました熱が再び犬飼を襲う。

 

そしてその熱を抑えきれず、

犬飼は無言でそっとその手を握り返した。

 

 

――――あふれ出すその笑顔をみて 僕はそっと手をつなぐ
目を閉じてゆっくり開ける 今 君はきれいです

 

「本当に今日はいつになく素直ですねぇ…。素直な犬飼君、大好きですよ」

 

辰羅川の何気ない言葉に驚く犬飼。

この言葉に深い意味がないことは知っていながらも自然と足取りが軽くなる。

 

『単純すぎるな』

 

そんな自分を心の中で笑い飛ばし、

二人は屋上を後にし、教室へと歩いていった。

 

まだ犬飼はこの思いを告げることはできないだろう。

 

しかし…

 

 

「…きれいだな」

「え?あぁ…今日の空は本当にビューティフルですよね。サボリたくなる貴方の気持ちが少しだけわかりますよ」

 

空ではなく辰羅川自身のことを言ったのであったが、

無意識に呟いた言葉に辰羅川が苦笑しながら応える。

そしてようやく自分が思いを口走ったことに気付き、

犬飼は再び頬を染める。

 

背は高く美しいが内気な犬飼と

真っ直ぐだけど鈍感な辰羅川

 

彼らはゆっくりとした足取りで歩いていくだろう。

だけど、確実に近づきながら。

不器用な駆け引きを繰り返しながら。

 

1歩1歩、必ず、二人は…。

 

 

――――あふれ出すその笑顔が 僕の事惑わせる
目を閉じてゆっくり開ける 今 空がきれいです

今 空がきれいです

 

 

FIN

 


歌詞引用:RAG FAIR…でもこの歌冬の歌なんですよね(汗)

 

しょぼい小説すみませんでした(汗)

辰犬に見えないこともないですが犬辰です(汗)

駄作ですがどうか受け取ってください!

遅くなってすみませんでした!

 

THANK’S 600HIT☆

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