STRAWBERRY GUM】

 

 

 

 

――――それは甘い香りの

             苦い思い出…

 

「御柳、お前いつも甘い匂いがするよな?」

「…あぁ、コレっすよ」

 

屑桐さんの何気ない質問に顔を上げ、俺はポケットから何かを取り出した。

 

      それはイチゴ味の

          甘い 甘い ガム

 

「お前そんな甘いもんよく食えるな…」

「屑桐さんにはあげませんよ〜」

 

しかめっ面をした屑桐さんを見て、俺はガムを膨らませながら笑った。

 

     …だけど、

        この甘い風船の中に詰まってるのは

           苦い 苦い 思い出

 

 

 

 

 

「…」

 

いつものように親からくすねたタバコを吸いながら屋上で佇む中学生の俺。

髪も染めて、子供が行っちゃいけない場所にも出入りして…。

セイコーからすら見放された不良…。

 

誰も俺を見ないし

誰もかまったりしない…。

 

     孤独


 

…だけど、その日はいつもと違った。

 

「御柳君、タバコは感心しませんね」

「え…?」

 

ひょいと伸びた白い腕。

その腕に俺のタバコが奪われた。

 

「お、オイ!かえ…辰羅川?」

 

火のついたタバコを指にはさみ、満足げに微笑み男。

そこにいたのは幼馴染の辰羅川だった。

 

――――…そして俺の想い人でもある。

 

      …そう、俺はコイツが好きだった。

      物心ついたときから、ずっと。

      俺がグレていたのも

      よく思い出せばコイツにかまってもらいたかったからかもしれない。

 

「な、なんだよ、何しにきたんだ?」

「私が知らないとでも思っているのですか?タバコはよくありません、没収します」

 

辰羅川は天使のように柔らかく微笑み、

俺のポケットに入れていたタバコまで持っていった。

その姿があんまり自然で、美しくて、

一瞬見ほれたが、すぐにいつもの調子に戻って俺は声をあげた。

 

「オイ!何考えてんだよ!それ俺のだろ!返せって!」

「いけません!ほら、これを代わりにあげますから」

 

そう言って出されたものはガム。

イチゴ味の甘いガム。

 

一瞬『はぁ?こんなもの代わりになるかよ』とか思った。

だけど…その笑顔に魅入ってしまい、気付いたときには受け取っていた…。

 

「…あぁ…」

「素直ですね。素直な人は好きですよ」

 

そう微笑む姿がまた美しくて…。

『好きですよ』という言葉に戸惑いながらもガムを口に投げ込んだ。

 

      『俺も好きだよ』

 

      お前の『好き』とは違うんだろうけど

 

 

      クチャ

 

 

そんな言葉をガムと一緒に噛み潰した。

 

「よろしい!さ、教室に帰りましょうか」

「…あぁ」

 

辰羅川の背中を追う俺。

ハッキリと迷いのない足取りで歩く辰羅川の背中を。

 

…だから…あの日から、俺の口の中にあるのはタバコじゃなくてガム。

 

 

 

 

――――だけど、俺は知っていたんだ。

アイツの視線の向こうにいるのは誰なのかを。

 

「犬飼君!またそんなもの食べて!ほら、もっと栄養のつくものを!」

「いちいちうっせーな…」

「うるさいとはなんですかー!」

 

「…」

 

…そう、それは犬飼。

 

俺にはわかるんだ…。

辰羅川が犬飼を見る目が、

俺が辰羅川を見る目と同じだったから…。

 

…どうして俺じゃないんだ。

お前にかまってもらいたくてわざと不良の真似事までしたのに…。

どうしてお前は俺を見ないんだ…。

 

…俺なら、お前を愛する自信もあるのに…。

 

 

      クチャ

 

 

また言いたい言葉をガムと一緒に噛み潰した。

 

…いいんだ。

勝ちの見えない勝負はしない。

 

…だって俺は卑怯だから…

 

…だから、

一生『好き』だなんて表に出したりしない…

 

この思いは俺しか知らない秘密。

 

絶対 誰にも 教えない

 


      ――――だけど…

 

 

「…俺がガムを噛み続ける限り、俺はアイツを…」

「ん?何か言ったか?」

「え〜?何も言ってないっすよ〜?」

 

振り返った屑桐さんを見て、俺はへらっと笑った。

 

…俺はきっとこれからもガムを噛み続けるだろう。

言いたい言葉と一緒に。

 

ずっと

永遠に

俺はガムと一緒に言葉を噛み続ける。

 

 

 

      甘く 苦い

         俺だけの秘密。

 

               STRAWBERRY GUM

 

FIN



せつない系の小説を書こうとして玉砕しました(汗)
私の中の理想の芭辰を書こうとしたのですがどうもうまくいきませんね(汗)
私の中の芭辰は芭辰で犬←辰が基本です♪
全員思いを告げられない、恋愛に対して弱いという設定で…

【おまけ】
辰「御柳君…ガムの噛みすぎもよくありませんよ。カロリー過多ですよ。これにしなさい(酢昆布)」
芭「…それはヤダ…」
犬「プ…酢昆布…」

どうでもいいですが芭唐が噛んでるガムはイチゴ味だと私は信じます!
芭唐の噛んでいるガムはイチゴ味だ!同盟

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